技術コンサルタントのひとりごと_No.77

今回は、私が執筆し、近日発売開始される『シッカリ学べる!機械設計者のための振動・騒音対策技術』の書籍の一部内容(はじめに、目次、おわりに)の事前連絡をさせて頂きます。

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 書籍名称:『シッカリ学べる! 機械設計者のための振動・騒音対策技術』 

 出版社:日刊工業新聞社

 ページ数:208ページ

   価格:2376円(税込み)

 発売開始日:2019年4月20日

 *現在、アマゾンにて予約注文受付中!

 *大学や大学院での講義内容を記した書籍ではありません。今までの振動・騒音の技術専門書に記載されていなかった、実務エンジニアにとって仕事ですぐに役立つ多くの内容が具体的に分かりやすく記載されています。

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この書籍の「はじめに」に記載されてる文章の全文

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 今までの約25年間の技術コンサルティング(技術指導)と技術セミナー講師の経験を基にいろいろな技術分野の実務エンジニアに役立つ最大公約数的な振動・騒音技術を選び出し、仕事にすぐに役立つ技術と技術ノウハウを少しでも多く書こうと考え本書を執筆しました。

 当社の技術コンサルティングは単なる技術指導だけでなく、わかりやすい技術解説を加え一緒に実験および実験解析などを行いながら問題点とその解決策をその場で指摘する技術コンサルティングを実施し、なおかつお客様の望まれる成果をお約束した期限までに出してきました。契約の基本期間は1年間で、必要に応じ毎年契約を更新するというスタイルで技術コンサルティング(技術指導)を実施させてきて頂いており、10年以上技術指導させて頂いている会社もあります。この方法は当初想定した以上にご好評を頂き、現在でも基本的にはこの方法で技術指導をさせて頂いております。

 また、技術コンサルティングや技術セミナーの講師だけでなくお客様が抱える実際の振動・騒音問題解決のための一連の研究・開発・設計・製造・現地据付・測定評価の仕事も過去10年間くらいやっておりました。

 本書にはこれらの経験も反映されておりますが、お客様との秘密保持契約が現時点でも有効な内容については当然のことながら本書に記載しておりません。それでも執筆し始めると書くべき(書くことができる)内容が思っていた以上に多く頭に浮かびどれを記載するのか選定するのに多少迷いました。

 また、振動・騒音の技術指導をさせていただく過程で、信号処理技術、有限要素法などによるコンピュータ・シミュレーションなどによるモデル・ベース・デザイン&ディベロップメントをはじめとして、振動・騒音分野だけでなく関連する技術分野、例えば、制御技術(古典制御技術、現代制御技術)、熱・流体技術、電気・電子技術、疲労・破壊技術、統計解析技術などを必要に応じて勉強し、振動・騒音問題を解決するために、多くのかつ幅広い技術分野の観点から技術指導をさせて頂いてきました。

 本書は、実務エンジニアが仕事をする上で大いに役に立つことを目的として、振動・騒音技術を中心にしてそれを取り巻く多くの関連する技術分野と連携させながら、厳密さよりもわかりやすさを優先して執筆されています。技術を楽しみ積極的に仕事に大いに役立てようという観点で本書をお読み頂ければ幸いです。ここでいうところの実務エンジニアとは企業で機械・装置の開発や設計業務を行っておられるかたをさしておりますが企業の技術研究所に勤務されているエンジニアにも役立つ内容になっていると考えます。

 特に、機械設計にて力学設計のベースとして活用される材料力学の知識をどのように振動工学に連携させ、設計時において手計算程度でできる振動対策(共振対策)計算にどのようなものがあってどのように考えて設計すればよいのかについてもある程度は解説できたのではないかと考えています。

 そして、具体的には下記のようなかたがたを想定して執筆しました。 

1) 自分で設計した機械・装置を試作したら、想定していたよりもかなり振動や騒音が大きかった。この振動・騒音を小さくしないと新商品として発売できない状況になった。

2) 販売した機械・装置の振動や騒音が原因で、客先でクレームが発生しておりこの問題解決をしなくてはならなくなった。

3) 設計段階で少しでも低振動化設計、低騒音化設計をしたい。このためのエンジニアリング・センスも修得したいしそのために使える技術にはどのようなものがあるのかも知りたい。

4) 低振動化・低騒音化のための技術の研究・開発を行いたい。

などです。

 次のようなかたがたにも十分に役立つ内容になっています。

 自分の専門分野は機械・装置の開発や設計であり、振動・騒音技術については詳しくないので技術的にどのように対応すればよいのかわからず困ってしまったとか、現時点では上記のような状況にいないが、今後このような状況に遭遇することが十分にありえるので今のうちから仕事ですぐに役立ちそうな振動・騒音技術を勉強しておきたい。あるいは、自分は有限要素法などによる振動や騒音の数値解析が専門で、実験解析技術など数値解析技術以外の技術には不案内なので、これらも含め広く勉強しておきたい、と言うかたにも十分に役立つ内容になっていると考えます。

 実験モード解析ソフト、伝達経路解析ソフト、有限要素法などによる各種の数値解析ソフト、最適化ソフト、他のさまざまなモデル・ベース・デザインのためのソフトなどさまざまなソフトが市販されていますが、基礎技術を修得せずにこれらのソフトを使用しても解析結果が正しいのかどうかの妥当性を技術面から検証できなければ、解析結果に振り回されてしまうだけです。

 本書では、そういうことにならないための基礎技術とこの基礎技術の実務面での応用のしかたについて多くの実例といくつかの計算例を用いて解説しております。本書をお読み頂ければ、本書に記載されていることを自分の仕事にこういうふうに応用展開すればよいということが思い浮かぶのではないかと考えております。思い浮かばないかたは思い浮かぶようになるまで、本書をお手元において頂きご活用頂ければ幸いです。

 また、各項目の並び順は、筆者の感覚などによるものであり、特に理由があっての並び順ではないところもあります。その項目にわからない技術専門用語などがあり解説されていない場合は、関連する他の項目をご参照頂ければその解説をみつけることができると思います。

 ところで、技術コンサルタントとしてお客様を訪問させて頂いた際、特に訪問先が設計部門の場合、下記のようなことをよく感じました。

「機械・装置の設計者としては優秀で経験豊富なかたでも基本は材料力学をベースにした静力学による設計技術に優れたかたであり、動力学である振動技術のことはほとんど理解されていないことが多い。騒音工学についてもほとんど勉強されてないかたが多い。」

 こうした状況にもかかわらず、発生した振動・騒音などの動的な問題を自分が理解している静力学に基づいた設計技術で解決しようとしておられました。振動を理解するにはまずは動力学としての振動工学を、騒音を理解するには騒音工学を実務の観点から勉強してからでないと、的外れな対策が多くなり、多くの時間と費用をかけても結局問題解決ができないということになりかねません。技術的根拠が希薄な勘だけに頼っていると、100発打っても1発もあたらないということもあり得るのです。

 よって本書では、振動・騒音問題を解決するに際し、機械設計者が勘違いしやすい技術、陥りやすい技術、理解しにくい技術にも焦点をあてて解説致しました。

 本書は振動・騒音技術についての実務書という観点から、学問的な内容の技術でなく、主に機械・装置の開発・設計者にすぐに役立つ内容を筆者の知見の中からではありますがポイントを分かりやすく解説したつもりです。お忙しい方は必要なところだけを単独で読んで頂いても理解しやすいように工夫しました。

 また、振動・騒音問題が発生したときに、発生している現象を物理現象として捉え、その物理現象の本質を見抜き、どのように対策すればその問題が解決できるかという技術を身につけるに際しても本書に書かれていることがその道標になると考えております。

 とはいえ、私自体がいまだに勉強中であり独りよがりな内容になっている可能性があるかと思いますが、上記の趣旨を考慮してお読み頂ければありがたいです。

 この本が一人でも多くの実務技術者のお役に立てば幸いです。

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この書籍の「目次」の全部

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1.機械の開発・設計者が振動・騒音技術を理解するために必要になる基礎技術を項目別に解説

 1-1 振動と音は同じ波動現象だが、物理現象としての違いは何なのでしょうか?

 1-2 同じ波の現象(波動現象)なのに、音と振動で取り扱う上限周波数が違うのはなぜでしょうか?

 1-3 音の継続時間が200msec以下なら人間は音の存在に気がつかないらしい!

 1-4 周波数の低い騒音のほうが、うるさく感じない!

 1-5 騒音は固体音と空気音に大別できます。どちらの騒音かによって騒音対策の内容が全く異なり ます。 よって、問題となる騒音が固体音であるのか空気音であるのかを明確にするのが騒音対策の1丁目1番地になります。また、振動による音の音響放射効率とは?

 1-6 実は物体には3種類あります。それらは質点、剛体、連続体です。これは意外に重要なことなのです。各物体のための力学が構築されています。この3種類の物体は各々どのようなものなのでしょうか?

 1-7 振動体のモデル化のしかた(質量、剛性、減衰)

  <コーヒーブレーク : 線形1自由度振動方程式における線形とは?>

  <コーヒーブレーク : 何自由度でモデル化しますか?>

 1-8 ダランベールの原理のおかげで振動を方程式であらわすことができます!

  力が釣り合っているときは物体が静止していますので等号を使用して釣り合いの式を作成することができます。振動では物体が動いているにもかかわらず力の釣り合いの式を作成するように振動を式で表すことができます。なぜでしょうか?

 1-9 力学は静力学と動力学に大別できます。静力学と動力学、どう違うのでしょうか?

 1-10 静剛性と動剛性、どう違うのでしょうか?

 1-11 一言で物体の質量といっても、静的質量と動的質量(等価質量)があります。

  どのように違うのでしょうか?

 1-12 比例粘性減衰力はなぜ、物体の振動速度に比例するのだろうか?

 1-13 非減衰固有振動数、減衰固有振動数とは? 固有振動数とは何のことでしょうか?

   <コーヒーブレーク : 非減衰固有振動数、減衰固有振動数、共振振動数>

 1-14 振動モードとは? 減衰固有振動数との関係は?

   <コーヒーブレーク : 集中定数系で自由度と固有振動数の各々の総数を考えてみよう!>

 1-15 シンプルな形状の物体の固有振動数や振動モードはクラドニ図形やストロボによって知ることができます。

 1-16 世の中の物体は1自由度系では振動しないのに、振動の技術専門書には線型1自由度系の振動理論が多くのページをさいて解説されているのはなぜでしょうか?

  1-17 力の回転モーメントとはどのようなものでしょうか?回転振動を考える上で重要ですので具体的にイメージしてみましょう。

 1-18 直線におけるニュートンの運動方程式から回転における運動方程式を導くことが

できます。そのやり方は?

 1-19 回転の勢いと角運動量との関係は?

 1-20 直線運動と回転運動、エンジニアとしてどのように考えどのように取り扱えばよいのでしょうか?

 1-21 断面2次モーメントと慣性モーメント、どのように違うのでしょうか?

 1-22 回転軸の振れ回りと危険速度

 1-23 ねじり振動の固有振動数の求め方

 1-24 機械や装置などの物体の減衰固有振動数を測定するための理論は?

   <コーヒーブレーク : フーリエスペクトルとパワースペクトルの違いは? そして周波数応答関数>

   <コーヒーブレーク : FFT(高速フーリエ変換器)の使用に際して、操作者が自分で決めなければならないこと>

   <コーヒーブレーク : 各種の周波数応答関数の呼び方>

   <もう少し詳しく! : FFTで イナータンス → モビリティ → コンプライアンスへの変換における積分特性>

   <もう少し詳しく! : 実際の周数応答関数(イナータンス)の測定データから共振周波数であるかないかを検証してみよう!>

   <コーヒーブレーク : 測定時に過負荷インジケータ(オーバーロードインジケータ)を常に監視していますか?>

 1-25 多自由度(2自由度以上)の線形減衰振動のニュートンの運動方程式の作成のしかたとそれらの行列表示のしかた

 1-26 振動加速度ピックアップの接触共振周波数とは?

   <コーヒーブレーク : 振動加速度ピックアップの選定では重量が重要、MEMSによる振動センサーとは?>

 1-27 要注意! 振動加速度ピックアップのケーブルの取り扱いノウハウ

 1-28 有限要素法などで使われている「場の支配方程式」とはどのようなもですか? 場の支配方程式の例として音の波動方程式を詳しく考えてみましょう!

   <もう少し詳しく! 非定常の波動方程式から定常の波動方程式を導出>

   <もう少し詳しく! : 流体や電磁場でもよく使用されるベクトル解析という数学をワンポイント解説>

 1-29 振動放射音の発生メカニズムには近接音場と遠音場の物理も含まれます。これからすると全ての振動エネルギにより放射された音が遠音場に到達しているわけでありません。近接音場における音響エネルギの渦とは?

  <コーヒーブレーク : 場とは? どこまでが近接音場かを簡単に確認する方法は?>

  <もう少し詳しく! : 音響インテンシティはどのような理論に基づいて計測されているのでしょうか?音響インテンシティ計測における直接法、間接法とは?>

 1-30 振動・騒音分野ではごく普通に複素数が使用されます。なぜ複素数を使用するのでしょうか?

  <コーヒーブレーク : 任意の大きさの位相を数式で表すには?>

 1-31 振動加速度をFFTで2回積分すると変位になりますが、この変位データは使用しないほうがいいでしょう。

  <コーヒーブレーク : 振動加速度ピックアップの縦感度と横感度>

 1-32 空気の粒子速度とは? 粒子速度と音の伝播速度は異なります!

 1-33 有限要素法による振動解析の種類と概要(機械分野にて)

  <コーヒーブレーク : 有限要素法を言葉で単刀直入に短い文章で説明すると>


2.機械の開発・設計者に必要になる振動・騒音の低減技術と問題解決技術

  2-1 たたみ込み積分、周波数応答関数、コヒーレンス関数とは?

  2-2 モード信頼性評価基準(MAC)とは?

  2-3 周波数の低い騒音のほうがうるさく感じない。これを使った騒音の低減化方法を考えてみましょう!

   <コーヒーブレーク : 技術コンサルティングや技術セミナーの講師だけでなく振動・騒音問題解決のための開発・設計・製造・現地据付・測定評価の仕事も10年間くらいやっていました>

  2-4 電子部品が高密度実装されたプリント基板にてどの部品が騒音源であるのかを見つける方法は?この場合の騒音の最大低減量の数値を求める簡単な方法とは?

  2-5  大きな振動は大きな騒音を放射するというのは間違い。振動体の音響放射効率を考えないといけない。また、正方形の板と細長い薄板を比較すると細長い薄板の音響放射効率は通常低くなる。

  2-6  衝撃振動は、時間幅が大きくなるにつれて周波数帯域が狭くなります!

  2-7 振動を測定するとき振動加速度ピックアップをどのように取り付けておられますか?

  2-8 自分が実測した測定データに測定した瞬間に違和感(このデータはおかしい、変だ)を感じたもう1つの例

  2-9 丸型防振ゴムで防振支持した系全体の固有振動数の計算のしかた

   <コーヒーブレーク : バネーマス系の剛体の固有振動数を求める式と変位を求める

   式を導出してみましょう>

   <コーヒーブレーク : バネーマス系の剛体の固有振動数を求める式を実務エンジニア

   リングに使用しやすくなるように変形してみよう!>

  2-10 共振を回避できないときはダンピング(減衰)により共振の程度を弱めることができる

  2-11 意外に多いコイルばねの設計・選定における失敗!

     実務におけるサージングしないコイルばねの設計のしかたと計算例題!

  2-12 固有値解析には「標準的な固有値解析」と「一般的な固有値解析」があります。

     実固有値解析による振動モードでは絶対値が求まらず相似比しか求まらない理由は?この2つの固有値解析の関係と計算例

    <もう少し詳しく! : 一般的な固有値問題」と「標準的な固有値問題」が等価に

     なる理由>

   <もう少し詳しく! : 固有値解析のための行列 [A] の計算のしかた>

   <コーヒーブレーク : 実固有値解析による振動モードでは絶対値が求まらず相似比

しか求まらない理由>

  2-13 部品やユニットの固有振動数の値をある範囲内に抑え共振回避するための設計計算法の例

  2-14 有限要素法の実固有値解析による機械カバーの問題点の抽出と対策

  2-15 実例で考えよう! 実際の機械設計にて静剛性と動剛性はこんなに違う!

  2-16 ねじり振動系を直線振動系に置き換えて固有振動数を計算する方法

  2-17 スティック・スリップの場合の自励振動のモデル化と相対速度依存性

  2-18 実務エンジニアリングの観点からのパッシブ(受動)消音とアクティブ(能動)消音

    <コーヒーブレーク : 日本におけるANCの歴史的経緯の概略>

   <コーヒーブレーク : 実務にける要領のよいアクティブ・ノイズ・コントロールの使い方>

    <コーヒーブレーク : いろいろな制御理論について>

  2-19 工場の防音対策を安価に行う方法は? 防音工事は防音工事屋でなく自分たちだけで十分できます

  2-20 空気中での音の吸音率と超低周波音対策の実際例

  2-21 通常の事務所や工場などでは対象とする機械の騒音を正しく測定できません。音響反射や定在波が生じるからです。 定在波により実際に発生した騒音問題とその解決のしかた!

  2-22 実務ですぐに使える実験解析による慣性モーメントの求め方とは?

  2-23 動吸振動器(ダイナミック・ダンパー)を設計するための最適設計理論とは?

     動吸振器のシミュレーションと計算例題

  2-24 等価質量同定法は大変便利! 等価質量同定法を使用した動吸振器の実務的な設計法とは?

  2-25 片持ちはり構造を持つ製品の固有振動数の計算のしかた

  2-26 実験モード解析とは? シンプルに解説すると

  2-27 線型1自由度系減衰振動と制御工学のブロック線図で描いてみよう。

     このように表すと、MATLABのSimulink上にすぐに描くことができます

  2-28 実務エンジニアリングの観点からの振動のパッシブ制御技術とアクティブ制御技術について

  2-29 振動センサのIoT化のしかた

  2-30 機械学習を使用した振動による故障予知診断のしかた

  2-31 マルチフィジックスの物理現象をモデル・ベース・デザイン(MBD)によるフロントローディング研究・開発・設計を行う。そして発生している物理現象の本質を見抜きそれを数式で表す技術を修得するには?

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この書籍の「おわりに」に記載されてる文章の全文

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  振動技術に本格的に関わり始めたのは、大学4年生のときの卒業研究でした。大学3年生の終わりごろ、東京電機大学工学部の振動研究室の三船博史教授から「世の中に有限要素法という新しい技術がでてきました。今年から当研究室でも卒業研究でこれをやることにしましました。4年生の卒業研究で当研究室に入って有限要素法による応力解析と固有値解析の研究をしてもらえませんか?」

 何の研究のことかよくわかりませんでしたが、今から約44年前の話で時代背景もあり、

「はい、やらさせて頂きます。」

というのが私の精一杯の返事でした。

この時点では、有限要素法のソフトは何一つ市販されてなく、日本語で書かれた有限要素法の専門書がまだ2冊くらいしかないという状況で、有限要素法を理解するには大変な時代でした。

 大学4年生のとき、就職活動を始めて数ヶ月した頃、私より一回り以上年上の知人(社会人)からお誘いを頂き、振動・騒音の測定器メーカーに就職することになりました。

 しかし、就職してから2年後に機械メーカーに転職してしまいました。筆者の大学時代の専攻は機械工学でしたので、やはり機械関係の仕事がしたいと考えたからでした。

 この機械メーカーでは幸運にも、製造、修理、設計、開発、研究といったいわゆる「製造から技術研究所」までといった一連の仕事を技術屋として経験させて頂き、技術研究所では振動・騒音の研究がなされていなかったので最初は一人で振動・騒音研究室のような組織を作らせて頂きましたが、最初なので当然のことながら何の実績・成果も出してないので研究費がまったく無く何の測定器も購入できない状態からのスタートでした。このような状況の中、当時の技術研究所の研究所長、課長に大変お世話になりました。

 そして5年が経過し39歳のときにこの会社を退社し振動・騒音技術とその周辺技術を専門とする技術コンサルタントとして独立しました。振動・騒音技術に関わって今年で約45年、こんなに長い間、振動・騒音に関わるとは夢にも思っていませんでした。

 技術コンサルタントとして独立してから、そして技術セミナーの講師を始めてから約25年間が経過しました。

 まだまだ、集大成として本を執筆できる状況ではありませんが、本書を執筆する2度目の機会を日刊工業新聞社の出版局書籍編集部の鈴木徹部長より頂きましたので、今回はいくら忙しくてもなんとしても書き上げなければという思いで執筆しました。1回目に頂いた機会は10年くらい前だったと記憶していますが、忙しさにかまけて執筆することができませんでした。にもかかわらず2回目の機会を与えて下さった鈴木部長の寛容さに大変感謝しております。  

 鈴木部長からは、実務エンジニア向けの書籍なので、数式はなるべく少なくするようにとアドバイスを頂いておりました。なるべく少なくしたつもりですが、営業マン向けの技術の入門書ではないのである程度数式が多くなりましたが、難解な数式は極力避け実務技術に関係する数式にある程度絞ったつもりです。

 数学嫌いの読者は数式を読み飛ばして頂いても、実務エンジニアリングにて役立つことがだいたい理解できるように執筆したつもりですので、技術を楽しみながら理解できるところだけでもいいのでお読み頂ければ、それだけでもかなり仕事に役立ち技術力も向上するのではないかと勝手ながら考えております。

 最後に、本書の執筆に際し、転載(許諾のうえ改変)の快諾を頂きました首都大学東京の鈴木浩平名誉教授、日本大学の背戸一登元教授(現背戸振動制御研究所所長)、名古屋大学の安田仁彦名誉教授など多くのかたに感謝致します。

 本書が実務エンジニアのための振動・騒音技術の参考書としてお役に立てば幸いです。


技術コンサル

主に振動・騒音の技術コンサルタントをしています。技術コンサルタント歴は、2017年の4月時点で23年です。当社(アイトップ社)の技術コンサルティングは、お客様と一緒に測定分析し、その場で技術指導もさせて頂きながら、当社の技術をお客様に伝授し、つまり技術移転をさせて頂きながら問題点を明確にし、具体的ですぐに実行できる対策案を短時間・低価格でご提供させて頂くというものです。

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